General Aviation Crashes

金持ちは墜落しても儲かる

胴体着陸したボナンザ。左はお医者様と息子達。 目の前でボナンザ墜落

ある晴れた日の午後、ヒヨコと訓練生仲間で機体をハンガーにしまおうとしていたその時、 地元のリッチなお医者様が操縦するビーチクラフトボナンザがRWY17で着陸態勢に入っていた。

折りしもFBO前から救助用ジェットレンジャーが離陸するところで、ヘリの横風をまともに食らったボナンザは 左右に激しく揺れて左翼が地面にヒット。しかしなぜかランディングギアを出していなかったため、 そのまま引きずられるように胴体着陸とあいなった。

幸い、お医者様と3人の息子達は怪我もなく無事だったが、ボナンザは再起不能。

後日そのお医者様は自腹で機体を治すのかと思いきや、保険金がざくざく降りて 修理代を凌ぐ勢いでがっぽり儲かったため、速攻で新しいマルチ(双発機)に買い替え。 わらしべ長者よろしくグレードアップしていた。

ファルコンヘッド機長のコメント

「そうですね。ふつう、お医者様といえど着陸時には必ずランディングギアを出さなければなりません。
しかし意外と知られていませんが、今回のようにわざわざランディングギアを出さずに降りるのは、リッチな人々にだけ許された 特別な着陸方法なのです。
うまくキメれば、もれなくワンランク上の機体にバージョンアップが可能ですが、 失敗すると元も子もないので、下々のパイロットは真似をしないほうが良いでしょう。」

。。。との事なので、我こそはと思う者はぜひ参考にしてほしい。


貧乏人はさらに貧乏になる

ノーズギア(前足)を骨折したC152。 C152のウィークポイント

フライト訓練でよく使われるC152はシンプルで頑丈な造りとなっており、ハードなランディングにも びくともしない丈夫なメインギアを持っていることで有名だ。しかし、そんなC152にも唯一の弱点がある。

ASA発行のC152 Pilot's Guide (p3-12)には次のように記述されている:

Cessna152は、たいへん着陸しやすい機体として世界的に有名である。 にも関わらず、まいとし着陸時の墜落事故の報告が後を絶たない。

これが機体の設計上の不具合によるものなのか、それともメジャーな訓練機としてハードに使用された結果 必然的に事故数が大きくなってしまっただけなのかは議論を待ちたいところである。

これらの墜落事故で怪我人が出ることは稀であるが、それぞれの事故報告は驚くほど酷似している。

"Cessna F152 -- 着陸時に連続してバウンスしたため、ノーズギアが損傷。機体に副次的ダメージ。。。"
"Cessna 152 -- ○○空港における着陸時の判断ミスにより、機体がバウンスしノーズギア損傷。。。"
"Cessna 152 -- RWY29着陸時に(中略)横風で左に流された直後に激しく落ち、ノーズギアが損傷した。。。"
"Cessna A152 -- ○○空港での着陸中に機体がバウンスし、ノーズギア損傷。。。"

本書ですでに述べたとおりノーズギア(前足)は弱く、とてもメインギア(2本の後足)の比ではない。 だからといってノーズギアの強度を試すようなランディングをする必要はないのである。(以下略)

ちなみにこの機体はリース元の会社がしっかり保険をかけていたので、本来ならさっさと修理できるはずであった。

ベテラン教官R氏は「こんなもの2週間で治るさ」と爽やかスマイルで言っていたが、実際には 「保険料が高くなるとイヤだから」というワケの分からない理由で自腹修理を決行。
結果、資金不足により治るものも治らなくなり、結局4ヶ月経っても修理は終わらなかったのである。

ボナンザのお医者様は保険の正しい使い方を知っていたようだが、 貧乏人は100円をケチって100万円をドブに捨てるような事を平気でやるので、観察していると実に面白い。